●17.賭博の旗揚げで儲ける

貧乏やったが、ともあれ山本組は旗揚げした。けど、いつも金がのうてピーピーしていた。
そないしているうちに、ワシのスポンサーゆうか、ファンゆうかダンナさんゆうか、
まあゆうたら会社の社長とか金持ちの人が2、3人できて、ワシ、ずいぶんカワイがられた。
 その社長の1人が、バクチしいや言う。家も貸金も貸してもろうて、賭場を週2回開いた。
博徒の旗揚げや。バクチは手本引き、サイ本引きや。週に2回で、月に8回や。
そのうち2回は親分のため、もう2回は組と兄貴のために賭場を開いた。これは儲かった。
 一晩でテラ銭が500万円ぐらい入ってくる。親分や兄貴分にも顔が立った。
ところがワシはダメなんや。おとなしく賭場開いて、若い者にまかせ、
テラ銭の計算しとりゃいいんやが、銭入ると自分でバクチ打つ、毎晩クラブをはしごする。
 あるだけの現金持って、大阪のクラブに行く。女の子なんか不細工な子でも、みな来い来いと呼ぶ。
お客さんの中にも気に入った人がおったら、ボトル1本つけてやる。
 ヤクザゆうのは、やっぱり男を売る商売だから豪快にいかにゃならん。
銭なんか、100万でも200万でもあるだけ全部使うてしまわな気いすまん。
 賭場開くようになって、大阪に事務所持てるようになった。
金庫に何百万円とか何千万円とか現金が入っている。
そないしたら夜中、眠れんのや。金庫の中に入っている札束が、
「ゼニ使え、ゼニ使え」とやかましく騒ぎよる。
 これ、ほんまでっせ。今日は、百万長者、日がかわったら無一文ゆうこともしょっちゅうあった。
けどワシは、金があっても無くともちいとも気にせん。
金がなかったら事務所から一歩も外に出ん。ただそれだけや。
 けど、ワシらはやっぱしケンカ屋や。万が一の時に銭がのうて動けんのじゃ格好つかん。
それでベンツやリンカーンゆう高級外車をバーンと現金で買うとくんや。
そないしていざゆうたら、真夜中であろうとかまわん、車金融やっとるヤツ叩き起こして、
1週間前に1000万円で買うたベンツを300万円ぐらいで叩き売る。
 こないやっとるから、ワシんとこにはアメ車であれ欧州車であれ、
高級外車がいつも2、3台転がっておった。
 けど、バクチゆうのは、ホンマに恐ろしいもんや。
ワシ、自分とこで賭場開くだけにしとけばよかったが、自分でもバクチするようになった。
しかも野球トバクや。
これが野球トバクの仕組み
大阪は野球トバクが一番盛んや。
ワシは元高校球児で、しかも智辯学園の初代野球部監督までやっとる
 プロ野球選手になったろう思うて、「死にもの狂い」で練習したこともあった。
だから野球トバクに手ぇ出すのはあんまりいい気はしなかった。
 けど、組構えて若い者も増える。金もたくさんいるようになる。
しかもワシは他のシノギ(金儲け)は全くダメや。バクチしかない。
 この野球トバクも胴元だけやっとればほんまに儲かる一方だが、ワシは自分でも張ってしまう。
プロ野球の場合、全試合があるとしたら、セ・リーグが3試合、パ・リーグが3試合の6試合がある。
例えばセ・リーグの1試合が巨人対阪神とするやろう。
先発ピッチャーとかチームの状態見てハンデ師が、ハンデつけるわけや。
 仮に、阪神1.0のハンデが出るとする。試合は1対1で引き分けや、
そないすると巨人に張ったもんが勝ちや。
10万円張った人は、テラ銭の1割取られて9万円儲けゆうこっちゃ。阪神に張った人は負けや。
胴元は勝とうと負けようと1割のテラ銭を取る。これが野球トバクの仕組みや。
 これがとんでもないほど面白い。なんせプロ野球ゆうたらシーズン中はほぼ毎日ある。
いつもいつも先発ピッチャーが分かるわけじゃない。
ハンデ師ゆうのがそれこそ地獄耳で、スポーツ新聞や、週刊誌でさえ知らんような情報握っとる。
 けど、このハンデ師の読みが大ハズレする時もある。
片方に1本かぶりしてえらいめにあうこともある。そうなっったら、胴元が破産してしまうのや。
だから、500万円とか1000万円ゆう大きい金張ってくる客がいる時は、
胴元同士でまわし合う。つまり危険分散ゆうわけや。
 ワシは野球には自身があった。ハンデ見て、ピーンときたら、
胴元回しの受け金なんぼでも受けた。金がなくても受けた。
 しかも、自分でも1000万円、2000万円と張る。一晩で5000万円ぐらい儲かるなんてザラや。
ところがワシが儲けても、胴元回しの受け金でドッサリ取られてしまうこともある。その逆もある。
そないして儲かったゆうては、クラブで大散財する。こんな事やっとれば、人間、バチも当たるやろう。
案の定、ワシはバクチで大ヤケドしてしもうたんや。

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