●23.元山口組系組との抗争事件

あれは昭和51年のことだった。ワシんとこの淡路会と、元山口組系のある組との間で抗争事件が起きた。相手の組はその後、山口組の分裂で一和会に行き、
今は解散してしもうたが、当時は超武闘派として恐れられていた。
 この元山口組系の組との抗争は、暴力団の51年抗争として大阪の新聞には何度もデカデカと書かれ、
大阪市民の皆さんには大変迷惑かけてしもうた。
今、懺悔の意味もこめて、この抗争事件の真相を語ろうと思う。
 事の発端は極めて単純だった。
ワシんとこの若い者が、元山口組系の組の若頭の補佐しとる人間と、飲み屋でケンカになって、
相手の頭をビール瓶でカチ割ってしまったんや。
 うちの若い連中も「このまま帰したらアカン」と思ったらしい。
けがをさした相手の頭をウチの事務所まで連れてきた。
ワシはある件で、1ヶ月前に刑務所から出てきたばかりで、このケンカがあった時は京都の家におった。
 うちは酒の上でのケンカはご法度や。
そこで、連中は、「親分の耳に入れないでなんとか済まそう」と相談したらしい。
 ところが、相手の素性を聞いたら、あの山口組の中でも武闘派で有名な組の幹部だと分かった。
「こりゃ、えらいことをしてしもうた」と思うたらしいが、もう取り返しはつかん。
頭をカチ割ったヤツは逃げてしまった。うちの若い連中は困り果てて、ワシに電話してきた。
 怒られるのは承知の上で、事のいきさつを説明した。
「とにかくやな、過ぎたことはしゃあない」
ワシがこう言うと、てっきり怒られると思っていた連中は、カラ元気がついた。
「」相手は “助けてくれ!” ゆうて泣き入れてます。いっそのこと、殺してしまいましょうか」
と興奮してゆうてきている。
 「アホか!丁寧に送り返せ!」と指し図して、車を呼んで帰らせた。
受話器を置きながら、ワシも内心は、「エライことになるかもしれん」と思った。
 淡路会の親分や、兄貴分に相談した方がええかもしれん。相手はかケンカ慣れしとるので有名な組や。
そこの組の幹部の頭カチ割ってしもうたんやから、ただでは済まんだろう。
もし、これがワシのとこやったら、問答無用でケンカや。
 そんなことをいろいろ考えていたら、家の電話が鳴った。事務所からや。
「頭、相手の組から電話がありまして
“うちのもんと知って頭カチ割ってくれたな。これで済むと思うな ” とゆうてきてますが…」
こん時、ワシは腹をくくったんや。
相手の組事務所でおはぎを食う
ワシ、バーッと大阪に行った。もちろん、相手の組事務所に乗り込む気や。
まず、淡路会の事務所に寄って、ワシが直接、相手の組事務所に電話した。
名乗ると、「コラァ!山口の者にこんなことさらして、ただで済む思うとんのかい!」
 「さっきウチで、頭下げて帰った頭いてますか」そないしたら、
「ただいま外出中です」言いよる。
「あんたとこの頭、ウチへきて “助けてくれ” といいますさかい、丁寧に送り帰してやったんですが、
どういうことですか。
組の頭の所作ゆうものがどんなもんか、これから、ワシがそっちに行かせてもらおうやないかい」
 とゆうて電話を切った。火事場のアホ力や。ところがうちの若い者が、
「一人で行ってはいけまへん」とゆう。
「アホかい。おまえら連れていって、ワシに恥かかせる気か」
ワシ、大阪のホテルでその元山口組系の組の迎えを待っておった。
その事務所に行ったら、若い衆が40〜50人おった。
バァーッと囲まれて、問答無用で両わきと後ろからハジキ突き付けよった。
 「おう、こりゃえらい歓迎やなあ。ところで組長おるか」と聞くと、
「留守だ」とぶっきらぼうな返事の上に、
「頭カチ割られて、男のみ間に傷つけられて辛抱できると思うのか」ときた。
 これが相手の最初の切り口上や。ワシもこうなったらしゃあない。腹くくった。
けどケンカするばっかりでは、頭失格や。話し合いの糸口はないかと思うて、
「うちは酒の上でのケンカはご法度や。お互い、ケガしとるんやから、見舞い見舞われでええやないか。
ワシも淡路会の頭やっとる人間や。こんな話をつけんと帰ったら、カッコつきませんわな。
若い者の粗相はワシが始末する。ケンカが嫌で、話するんやおまへん。
ケンカする前に、話し合いで済むことやったら、済ませるゆうのが筋とちゃうか。
だれか責任持って、話のできる人間はおらんのかい」
こないゆうても、だれも出てこん。
 そのわきで次々電話がかかってきとる。しかも、ワシに聞こえるように、こと細かく報告しとる。
そして、「殺してしまいましょう」なんてやってるわけや。
 こないなったら、もうどうでもええわ、と思った。映画の高倉健のセリフやないけれど、
自分とこの敷内で殺されるより、よその敷内で殺される方が極道冥利に尽きると腹決めたんや。
 「上等やで、好きにせんかい。
あんたとこの頭みたいにやな、謝って帰してもらって居直るような事はせんのや。
あんたらもケンカしてうちの若い者殺すより、ワシのタマ取った方がええやろう。
メザシの頭でも頭は頭や。殺しなはれ。
ただし死にみやげにひとつだけ聞いてやっておくんなはれ。ワシはおはぎが一番好きなんや。
殺されて解剖されて腹の中からおはぎが出てきたら、ここで食ったんやとみな思うやろう。
そないしたら、好きなおはぎ食って死んだんやから、
頭もさぞ満足だっただろうと思ってくれるやろう」とゆうてやった。

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