●11.ヤクザ最初の刑務所つとめ

ほんまもんの極道になる決心をして、奈良から大阪に出た。
ほんまもんの極道になる決心をして、奈良から諏訪組系淡路会の大西敏夫会長のところに世話になったが、
そのころの淡路会は20人ほどしかおらんところに、
ワシの若い衆が20人もついてきたんで、いっぺんに淡路会は大きくなってっしもうた。
アパート借りてメシ食わしてもろうたが、いま、考えるとほんまに迷惑かけたと思う。
 なんせそのころのワシらゆうたら、金もうけなんか全然知らなかった。
ゴンタゆうか、ケンカだけやっとればいいと思っていたんや。
ワシも後になって一家構えて分かったが、そんなんはあとの祭りや。
 ワシらの頭ん中には、ケンカしかなかった。
当時、ヒト一人殺したら5年やった。
はよう刑務所行って、金バッチつけたい。そればっかり考えとった。
 そないしとると、あろ日、親分の親しい寿司屋のオヤジが、酔っ払った客に刺された。
ワシらは、みんなと親分の家でメシ食ってたが、その寿司屋のおかみさんから泣いて電話があった。
ワシらは、親分と一緒に駆けつけた。
親分は寿司屋に着くなり、
「どいつじゃ!」
ゆうて、すし屋のブ厚いマナ板を持ちあげ、刺した男の頭をポーンや。
男はひっくり返ってアワ吹いて目ェむいとる。
「こりゃアカン。死ぬぞ、病院連れてきや」いわれてワシ、病院へ担ぎ込んだ。
ところが、あたりどころが悪かったのか、その男は1週間ほどで、死んでしもうた。
警察が来よった。
あんなブ厚いマナ板持ってド突くような男ゆうたら、相当力のある人間や。
警察から、
「そんな力あるのだれや」と聞かれて、
「ワシや」と答えた。親分の身代わりになったんや。
 傷害致死や。裁判受けて、大阪刑務所に2年、これがワシの最初のつとめになった。
「これで男になれる、出てきたら金バッチや」と意気揚々と刑務所にいった。
 ところが、刑務所いうところは、ほんまにエライとこやった。先輩に聞いとった話と全然違う。
町の乞食でも着んようなぼろぼろの服きせられて、うちの犬でも食わんようなものを食わす。
この世の中にこんな所があるんか、思うたぐらいや。地獄とはこんな所をいうのやろう。
しかもワシは態度は大きい、すぐに口答えするゆうて、袋かぶされてド突きまくられる。
何度も懲罰房に入れられた。
 刑務所行って、鉄格子から真っ赤な空が見える。窓の外にイワシ雲がパーッと浮かんでいる。
生まれたばかりの子供はどないしてるやろう。夢見るのもガキのころのことや。
初恋の女の子がセーラー服着とる。そして田舎の夕暮れの光景や。
 ワシの絵は、赤が多いいわれる。紅葉の赤、夕暮れの赤や。
ツライ思いして、2年間のつとめを終えたが、ヤクザいうのは、泣いて辛かった事はひとつも言わん。
見栄と虚勢の世界や。本音はひとつも言わん。かっこばかりつけとる建前の世界なんや。
殴り込み初体験
親分の身代わりになって傷害致死罪をかぶって、大阪刑務所で2年間つとめた。
出所の日に、親分や身内のもんや、みんなが出迎えてくれる。
刑務所の中であんだけツライ思いしたのに、ゲンキンなもんで、「ごくろうさん」の声に
つい、高倉健や。またその気になる。
 出所すると、やっぱりみんなの見方が変わってくる。兄貴分が、副会長になっていて、
ワシに若い者頭になれゆうてくる。そのころには淡路会の組員が120人からに増えとった。
 兄貴から
「オレに命あずけてくれ」といわれて
「よっしゃ」てなもんや。
「いつかワシも親分になってやる。そのチャンスがやっと来た」と思った。
 最初によその組に殴り込みに行ったのも、この時や。
殴り込みやるとなったら、大きい刀は部屋ん中では、よう使いこなせん。短いヤツや。
それも布で手にぐるぐる巻きにする。こないしたら叩かれても絶対に手から離れん。
週刊誌を濡らして腹にサラシできつく巻き込む。そのうえ火バシを両の腕に巻きつける。
こないして腹と両の腕を守って、頭に鍋くくって、地下足袋履く。
これが当時の殴り込みスタイルや。
 その時、一緒に殴り込みに行ったのは3人やった。車に乗り込むとき、後部座席の真ん中に
乗ったら出るのが少しでも遅くなるから、ちょっとでも助かるな、いう気持ちは本心にはあった。
けど、それじゃ格好がつかん。相手の事務所の前に着いたら電気がパァーッとついとった。
抜き身のドス持ってドアを蹴破ったが、よう見るとドアがほんの少し開いとる。
しかし、興奮しとって何が何やらよう分からん。
酒なんか一升ぐらい飲んどってもちぃとも酔えへん。
 バァーッとドア蹴飛ばして、中へ入る。ところが、敷居につまずいて転んでしもうた。
すぐに立ち上がろうとしたが、コロコロひっくり返って立てへん。
足がしゃちこばって立てへんのや。立っても、またひっくり返る。
「ウワァーッ」と声だけしか出ん。
そないしたら頭の上で、「バン!バン!」と拳銃2発、撃たれた。
 ワシはしょんべんと冷や汗やなんかでもう体じゅうがベタベタや。
もうアカン思うたが、とにかくその拳銃持っとる男にかかっていった。
そないしたら、なんか様子がおかしい。拳銃持っとるヤツが、
「待て、待たんかい」ゆうて逃げよるやないか。おかしい思うがな。
 そないしたら後ろに兄貴がおった。
後から分かったんやが、兄貴が先に行って話をつけておったんや。
さすがはワシが惚れた兄貴分や。不様なのはワシや。
 これがワシのヤクザになって最初の殴り込みや。みっともない話やけど、ほんまの姿や。
高倉健の映画もように格好よくは絶対にいかんのや。

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